気持ち - みる会図書館


検索対象: めざめれば魔女
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1. めざめれば魔女

アム、・ほくのほうを見てたけど、満足し ふたりともほっとしてるらしい。けさなんかも、ミリ てるって顔だったからね。まえは、くさった皮ひもの先に危険なペットでもつないでるような ーはそう言って、ひとりでにやっと笑った。「どうも、ぼくはいらいらし 顔してたけど。」ソリ て、わざとふたりに心配かけてたみたいだ。たけど、ふいに、もうたくさんだって気になった。 ゅめ なんだか子ども時代の夢がさめてくみたいでね。だけど、つい数週間前まで、ぼくはもう二度 とふたたびだれかを好きになるなんてことはすまいって思ってたんだよ。」 「あたしも父さんとはいっさい関わりなんて持ちたくないと思ったわ。」ローラは打ちあけ た。「今はちがうけど。」 かのじよ 「シドニーのサイコセラビストのこと、いっかきみに話したよね ? 彼女がふたりに言った んだ、ぼくがひどくソガイ感を持ってるって。ぼくはソガイってことば、辞書をひいて調べて みた。心が家族などから遠ざけられている状態っていうのと、気持ちがちがった方向にむけら そがいかん れてる状態っていうのと、ふたつあった。ぼくたちは今、ふたりとも疎外感を持ってるのかも しれないね、チャーント。ぼくは家族の中でひとり他人みたいでいるし、きみの気持はひとり だけ他の方向にそれている。うちのふたりは・ほくのことを、なんて言ったらいいかな、そのう、 びりびり電気を帯びてて手がつけられない困りものみたいに思ってて、きみにはアースになっ 362

2. めざめれば魔女

々ととび出してくるぐちはローラのまわりを羽虫にやられた気味の悪い鳥のように。ハタバタと そうそう 飛びかって、泣きついたり、せつついたりし、そのあまりの騒々しさに、ローラは一瞬めまい あわ を覚えるほどだった。その時、夜の闇の中からやわらかな光の泡がひとっ立ちのぼり、これで ローラはほかのことが考えられるようになった。ケートが仲間として無意識にローラを支えて トのむこう側にいて、ジ いたからだった。もしこの時、目を開けたら、ローラには母親がべッ ャッコのほうに身をかがめ、ジャッコを初めて胸に抱いて乳をふくませた時のこと、ジャッコ かんしよく ちぶさお の鼻が乳房に押しつけられたあの時の感触を静かに思い出しているのを目にすることができた だろう。あの時、ジャッコは生まれでたばかりのしわだらけの手をひろげて、まるで踊りを考 案してでもいるように、宙をすうっと動かしたものだ。ローラの気持ちは、今、ケートの気持 ちとよく溶けあっていたので、ケートの思い出はそのまま自分の思い出のようになってしまっ ーがよぎった。色あざやかな炎がばっと燃えあがっ ていた。そのとき、ローラのむの端をソリ たようで、ローラは落ち着かなくなった。ローラはゆうべのキスをちらと思いだした。変身の 世界でのスマートなキスではなく、自分の母親と祖母の見守る中でおすおすとしてくれたぎこ ちない、不器用なキスだ。あの時、ローラはキスされながらジャッコのことを思い出したもの かがや すいしやく だ。おかげでジャッコが今、目の前にいる。かっての輝きはすっかり失せ、衰弱してぐったり やみ ほのお いっしゅん おど 314

3. めざめれば魔女

「ぼくのこと、思い出してるの、チャーント。きみ、とっても気持ちがやさしくなってるけ ど。」ソリ ーの声がまた耳もとでした。 「今、ジャッコを抱いてるの。」ローラは答えた。「あんたもやさしい気持ちでいるでしよ。 あたしのこと、思ってるの ? 」 クースペリー 「いや、実をいうと、今夜でるはすのプディングのこと考えてたんだ。。 ルなんだぜ ! でも、まあ、たいしたちがいしゃないや。」 「じゃあ、あたしはプディングみたいってわけね。」ローラは憤慨して言った。 ーは力をこめて言った。「クリームた 「プディングはプディングでも、大好きなね ! 、ソリ あま っふりで甘く、それでいて、ちょっとすつばい。チャーント、それにしても四年はおそろしく 長いね。三年だって待ちきれないくらいだ。」 「でも、もう、最初の一時間がすぎたわ。、ローラは言った。 ケートとクリスはほぼ音楽にあわせて踊っていた。ジャッコはローラの胸に頭をもたせかけ ゅめごこち て夢心地でふたりを見ていたが、ふいに何を思ったか上半身をまっすぐ起こすと、ローラのほ うにむきなおった。 ローラの顔をまるで生ま 「もうちょっとがまんして ! 」ジャッコは何かを思い出して言い おど ふんがい 382

4. めざめれば魔女

と、クリスが座席の予約をしていてくれたら、その座席番号もね。なんかあったら、二十分以 内にここにもどってこられると思うわ。だから、心配しないで。ひと晩、母さんがでかけるか らって、そんなにかっかすることないでしよ。」 ケートは動じていなかった。ケ ートの言うのも、まあ、もっともだとローラは認めないわけ に。いかなかった。ローラは自分がどうしてこうも腹をたてたのかわからなくなり、なんだか がおろした ひどくみじめな気持ちになった。それで、目で半分あやまり、しばらくしてケート いっちょうら せいいつばい てのストッキングをはき一張羅のドレスを着た時には、すてきよ、と精一杯やさしく言った。 けれど、実際に出てきた声は意図に反して、本心をそのまま映しているかのように少しも心が こもっていす、ローラは自分で言っておいて、おどろいてしまった。 が、少ししてローラはもっとおどろくはめになった。ケートが早目にやってきたクリスに、 ジャッコの具合が悪く、この分では心配でとてもコンサートをたのしめそうもないから、やっ きつぶ ばりでかけるのはよす、と言ったのだ。切符のむだづかいよ、だってこの分ではたぶんあなた まで不愉央にしてしまうもの、とケートは言った。ケートはローラに言われてあれこれ考え、 げんかん また気を変えたのだ。クリスは満面に笑みを浮かべて、うきうきしながら玄関からとびこんで らくたん きたものの、ケートのことばを軽く受け流して落胆をかくそうか、それとも自分の気持ちに正 ふゆかい

5. めざめれば魔女

病人が出て、約束がはたせなくなって。クリスがグラスをおいて立ち上がった。いかにも立ち 去る人の風情だ。頭のてつべんから足のつま先まで、さよなら、ごきげんよう、と書いてある。 これでせいせいするわ、とローラは思った。そして、いきりたっ気持ちを押さえて、「母さ ん、どうしようもなかったのよ。わかってあげて。、と言った。 「え、なに ? 」クリスがびつくりしてふりむいた。ローラが同じ部屋にいることを忘れてい たみたいだった 「だって、母さんにはあたしたちがいるんだもの。」ローラは説明した。「母さん、どうする おもしろ こともできないのよ。本なら面白いところでもいったんおいて、また読みたくなったら手にす ればいいけど、あたしたちは本ではないし。それにジャッコだって、わざと病気になったんじ ゃないわ。」 クリスは何も言わなかった。 「あたしだって、もしさそわれてもやつばり外出できないと思うわ。」ローラは続けた。「そ れに、言っとくけど、あたし、ケートがどこのだれだか知らない人とでかけるのが気になって しかたがないほうなの。」 えんりよ ローラは言いだしたからには、クリスに遠慮などしないつもりだった。言いたいほうだい一 = ロ ふぜい

6. めざめれば魔女

「大丈夫です。歩いていけます。そんなに遠くありませんから。」ローラは四角張って答え ふきげん 「この人の家はキングズフォード通りなの。」ソリ ーが不機嫌に答えた。「いいよ、チャーン ト。ヴェス。 ( でひとっ走り送ってやる。もっとも、そっちのほうがあぶないかもしれないけど ね。何が起こるかわからないから。」 ソリーは怒りがしすまってきたようで、またすうすうしくなった。けれど、ローラのほうは 今、まさにりがビークに達しようとしていた。ふたりの気持ちはなかなかび 0 たりというわ け・こよ、 冫。しカオカ / 「あんた、あたしがここに来たのは、あんたのこと好きだからとでも思ってたの ? 、ローラ ふんぜん は賁然と言った。 : 、 カそう言いながら、きようもほかの女の子がソリーと話しているのを見て、 ねたましく思ったことを思い出していた。 「そうしゃなかったのか ? 」ソリーが言い返した。「正直になろうじゃないか : : : 」 「それはいけません ! 、おばあさんが割って人った。「さあ、ソレンセン、 ハイクを用意し て。こんな街をひとりで歩いて帰るなんて、そんなこと、ローラにさせちゃいけませんよ。 「でも、あたしはちゃんと来ました。」ローラは言った。 ・カーライル、一 = ロっとど、け・ たいじようふ 125

7. めざめれば魔女

「そうは思わないけど、でも、あたしのほうが、ちょっとね。、ローラは言われて、ありの ままに答えた。「あたし、いやよ、母さんやジャッコと離れてるの。」 「あたしだってよ。、ケートは言った。「でも、こっちにきたって、クリスやあたしとただじ っとすわってるしかないのよ。」 かれ しっと 「彼、そこで何してるのよ ? 」嫉妬でローラの声がかん高くなった。「どうして彼がそこに いて、あたしがいないの ? 、ケートは黙っていた。「母さん ? 」ローラはつめよった。 、。はかったわけしゃない 「わからない。」やっとケートは返事をした。「あたし、わからなし んだもの。気がついたら、そうなってたんだもの。あたしにだって、あんたがなぜそこにいる のか、わからないわ。何もかもあんまりいっぺんに起こって : : : どうそって言われて : : : その 時はありがたかったから、わらにもすがる気持ちでお願いしたのよ。あたし、ジャッコのべッ トのかたわらにすわって、そのこともすっと考えてたの。ローラ、あたし、今夜はジャッコの そばにいるつもり。だれもいない家に帰ってくなんて、思っただけで、たまらないもの。」 しゅうじん 「あたしは帰ろうと思えば帰れるのよ。」ローラは電話ロでわめいた。「囚人でもなんでもな いんだから。いっしょにいようと思えばいられるのよ。」 冫いたほうがよさそうだわ。」ケートは言った。 「でも、眠れそうもないし、こここ ねむ 179

8. めざめれば魔女

「さよなら、チャーント。 ソリーはまるで長の別れのように言った。「ぼくは別の道をいく ことで自分も変身できるかもしれないと考えた。もとにもどるために、きみを橋として利用し ようと考えたこともある : : : 」 「ソレンセン、あなた、だんだん忘れてきてるのね。」母親が言った。「あなたはやってみた けど、だめたったじゃない。あなたには選択の余地など現実にはないの。 「だから、こうしてさよならを言ってるんじゃないか。」ソリーは言い返した。 。いや、ほんとをいうと、その少し手前でたけど。 「じゃ、むこう側で会おうな、チャーント 。ほくも果たさなきゃならない役割をおおせつかってるんだ。これから行って、そのために心の 準備をしとかなきや。」 「ソレンセンは欠けてるところがいつばいあるの。」ミリアムはローラの先に立って二階へ ーのことをジグソ ーパズルみたいに言った。「あの子が自 の階段をのぼりながら、まるでソリ 分をつくりかえるのを、わたくしたち、あきらめているわけではないのだけれど、でも、今き がかりなのはあなたのことだけ。あなたとあなたの変身のことだけ。第一段階はやさしいし、 、くらいなのよ。わたくしたちは消せるかぎりの世界をみんな消してしまうの。」 気持ちがいし よく、う ローラはローラの手首ほどもある幾本かの太いろうそくのあかりの中で湯につかった。浴槽 せんたく 243

9. めざめれば魔女

ーの目をまっすぐ見つめた。 「あたし、ほんとのところ、よくわからないの。」ローラは言った。「でも、聞いて。あんた、 自分の部屋のあのポスター、はすせるわよね。あたしの写真はそのままおいて、かまわないか ら。でも、あたし、あのスターにビンで止められてるのはいや。 , 人々がふたりのそばを次 々と通りすぎていった。ソリーはもの問いたげな顔をして、ローラを見ていた。気後れして、 というより、ローラの言うことがよくつかめないでいるためらしかった。 「いったい、きみはこのぼくに何を思い出させようっていうんだい ? ややあって、ソリー はきいた。「まあしし とういうことか、見ようじゃないか。きみはすべてが終わったとたん、 また、ものの道理のわからない、 ・ほうっとした四年生にもどっていってしまうのかもな。」 たしたいよ 「あたしたち、ぼうっとしてなんかいないわ。」ローラはつんつんして言った。 もし、あたしが裸の男の人のポスターをはってて、そのすみにあんたの写真をビンで止めてた ら、あんた、・ とんな気持ちがする ? 」 ソリーは楽しむような、同時にちょっと恥すかしそうな顔をした。 しんてい 「そうしたいなら、すればいいさ。、ソリーは言った。「よかったら、写真、進呈しようか。 「ただ、言ってみただけよ。それに、そんなことあたしがしたら、もう母さんがうるさくて 、、 0 おく 307

10. めざめれば魔女

ラ、歩いているローラ、笑っているローラ。ソリーは水の中で写真を洗いはじめた。 「チャーント、きみって、とってもいい感じだね。」ソリーはガーデンディル住宅団地のむ こうで一 = ロった。 「その写真、全部現像するの ? 」ローラがきいた。ソリーはうなって、言った。「ラブ・ロ マンスはどうもちゃんと座を占めないうちにぼくの生活から遠ざかっていってしまいそうだか らね。でも、これからぼくはきみに対していっさい秘密のない人間になろうと思ってる。心配 しないで、さてと、きみを定着させるかな。見てろよ ! ソリーは言いながら写真を定着液の 中に人れた。 「あたし、あんたの知らないこと、知ってるの。」ローラは自分でも思いがけなく勝ちほこ うなばら かがや ったような気持ちになって言「た。ひとつの確信がはっきりと海原の波のようにきらきらと輝 いて、ローラを包んだからだった。「お気の毒さま。定着させられているのはあんたのほうじ ゃないの。あんたこそ愛にこだわって定着させられたの、どんなに愛をこわがっていても。あ のが んたはどう身もだえしたって、もう愛から逃れられないわよ。あたしにだって、それぐらいの こと、わかるんだから。」 なっとく 「定着されつばなしの男か。」ソリーは納得しかねるようにつぶやいた。「あ、あらしを見て 384