顔 - みる会図書館


検索対象: めざめれば魔女
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1. めざめれば魔女

るために何かできるはすと思うのに、どの前ぶれも結局ローラの手にはおえないことがあとに なるとわか 0 てくる。前ぶれがあ「ていいのは、ただ、やってくる何かに対して強くなる構え ができることだけだった。 「くつ、まだ見つからないよ。」ジャッ「が部屋の戸口にや「てきて、報告した。 ローラは ( アーブラシを手にして、自分の部屋の鏡をのそきこんだ。家じゅうでいちばんい とど いところにある鏡だ。窓からの光が直接それに届いている。ローラは自分の顔にじっと見人っ ( そう子どもつ。ほくもないじゃない ) ローラは前ぶれなどあきらめてどこかに行ってしまって くれればいし 、と、わざと別のことを考えようとした。が、鏡の中の顔はそんなローラの期待に はこたえてくれなかった。ローラは見ているうちに不安をとおりこして、こわくなってきた。 小さな変化が、時に大きな変化よりも 0 と人を不安におとしいれることがある。鏡に映る顔 が自分のものでないとどうしてわかったのかと、もしこのとき人にきかれても、ローラはどこ がどうだからとは答えられなかったろう。髪の毛はローラのものだったし、目だってちゃんと じまん 自慢の真っ黒なまっげにふちどられて、正真正銘ローラのものだった。、、、 がそれでも顔はロー ラの顔ではなか 0 た。その顔はローラの知らないことを知 0 ていた。顔はローラにはよくわか かみ しようしんしようめし

2. めざめれば魔女

ねえ。ほれ、汁がロいつばいにひろがってさ。あんなすばらしいことってあるかい。それから、 すはだひ ・ブラックは身もだえしな 素肌に陽があたる時のあの感じ。それから、塩、塩 ! 」カーモディ さけ がら叫んだ。「なんていいもんたろう、塩は。生みたての卵を四分ゆでて、そいつにかけてさ。 あせ 、フラック それから、人間の汗をなめた時のあの感じも。」こう言っている間にもカーモディ の顔はすこしすっくすれはじめた。どちらかといえば、左側より右側のほうが速かった。声も ふる 回転数をちがえたレコードのように震えている。 「帰りなさいよ ! 帰って、ジャッコにしたようなことは、もうだれにもけっしてしないよ えじき うにするの。ぜったいよ。」ローラは小声で命じ、必死になって自分の餌食から目をそむけよ っ ざんにん うとした。、、、 がそれはできなかった。ローラは無理にも残忍な目つきをして、その目つきを突 ・ブラックをその源へ、もといたところへと追いあげていった。感覚 き棒に使い、カーモディ ・ブラックの顔は刻々と変化し、その顔 的なよろこびを絶望的になって並べたてるカーモディ の中からたくさんの顔がちらちらとこちらをのそいた。男の顔あり、女の顔あり、子どもの顔 ありで、みんな、生きていることにさまざまなよろこびを見出しながら、今、目の前で必死に あくりようぎせし 懇願している悪霊の犠牲になっていった人たちだった。 あいがん 3 ・、、フラックは ~ 願 「たのむ、感じさせてくれ。このまま感じ続けさせてくれ。」カーモディ こんがん しる なら

3. めざめれば魔女

ーの目はけれど、脱皮 種類の人間につくりかえたのた。ローラはソリーをふりかえった。ソリ して表情ゆたかになったローラの目ではなく、その胸もとにうっとりと注がれていた。 「変わってないのね。」ローラはふくれた。ソリーはぎくっとし、それからあわてて、ロー ラのおぼえているかぎり初めて、恥すかしそうな顔をした。 ソリーはつつかえ た、ただ、そ、そのう : 「ぼ、・ほくは、そ、そんなつもりじゃ : つつかえ言い、ちょっとの間おびえたような表情を見せて、ひざますいている祖母と、まるく かげ ひろがるろうそくのあかりのふちに大きな影のように立っている母親のほうをうかがった ーはあやまった。それから急に声をあげて笑いだした。何ごとかとロ 「すみません。」とソリ ーラが見ると、ふたりの女たちのおだやかな顔には、本格的というには遠いもののそれでも春 あんど を告げるきざしのような、ためらいがちな安堵の表情が浮かんでいた。 「ほら ! 」ウインターがローラの横に立って、手をつきだした。長い指がひろげられると、 そこには小さな、安つ。ほいスタン。フがあらわれた。ケートの店でだって売っていそうな、まん まるいにこにこスタン。フだ。ローラは一瞬顔をしかめたが、すぐに表情をもとにもどして、ウ インターの顔を見上げた。ウインターはまじめな顔をして、大きくひとつうなすいた。スタン プはローラのようにおそろしい旅をしてきたあとでは、立ち止まるのもばかばかしいしろもの アイム いっしゅん たっぴ 274

4. めざめれば魔女

あんたが、あたしをいつもひとりぼっちにしておかなくてすんだら、そのほうが、あんたすっ と気がらくでしように。」 が、ローラは、その時はもう鏡をのそきこんで、自分は校庭でソリーにどんな顔を見られて いたんだろうと思い、もし毎日顔を見て大きくなってきていたのでなかったら、今頃は自分の 顔をどんなふうに見ているだろう、と考えていた。 ローラは、また、あとでソリーに会うといけないから、今日はいちばんいい服を着ていこう ーのお古のサンドレスでも自分にとってはとっておきの一枚たもの、 と心に決めた。たとえサリ それを着てソリーに会ったって彼の害にはならないはすだ。ローラは髪をたんねんにブラッシ ングした。そのうちにほんとうに少しつやが出てきたが、羊の毛みたいな外側の髪の毛はなか なか満足のいくようにはならなかった。ローラはサンダル靴もいちばんいいのをはき、少し化 しよう 粧してもいい力とケートにきいた。 「そうね、もし必要だと思うなら、すこし口紅つけてみたら。顔が明るくなるから。、ケー トは言ったが、ローラは口紅だけではおさまらす、アイラインを入れマスカラまでつけて、外 と思った。 国映画のヒロインみたい、 が、のちに病院でジャッコのべッ トのかたわらに立った時、ローラにはこうしたことがみん かれ かみ かみ 227

5. めざめれば魔女

顔をしてうつむいた。と、自分の手のひらからローラの顔がこちらを見上げて笑っていた。 ーが、自分の飼っている黒ネコのようにすばやく口ーラにうしろから近づくと、肩ごし に手をのばして、ローラのサングラスをはすした。 ーはローラをうながした。カーモディ ・ブラックが顔をあげた。 「さあ、言うんだ ! 」ソリ 自信満々な、ゆとりある表情が見る見るうちにその顔から消えていった。 ・ブラックの声に、ロー 「いったい何をしたんだ ? 」すっかり変わってしまったカーモディ ラは初めて生身の人間のうめきを聞きとった。ふたりの目があった。ローラにはすぐに、自分 フラックはローラにはいっさいカ のために門が開かれたことがわかった。もう、カーモディ くしだてはできなくなった。その指も、手のひらの絵をかくすように発作的に折りまげられは かれ したが、ローラがこの神経質な反応の出所をさぐっていって、彼の頭の中につきとめてみせる のを妨げることはできないだろう。ローラはもう、そこをじかに支配しているのだから。ロー トコントロールし、これからは町のど ラはカーモディ ・プラックを模型の人形みたいにリモー こにいようが、この男をやせおとろえさせることもできれば、太らせることもできるのだ。あ んまりあっけない事態の変化に、ローラはこういう力が生まれながらに自分にそなわっていた わけではなかったとは、ちょっと信じられないくらいたった。それなのに一方では、ローラは さまた なまみ 298

6. めざめれば魔女

あくま ひとすじなわ は年とってて、一筋縄ではいかない悪魔だからって。」 「そうね、考えてみなくちゃいけないわねえ。」年とったほうのカーライル夫人が言った。 むすめ : ええ、わたしたち、月の娘なのよ。でも、そのことについては 「カがないわけじゃなし。 またあとで話すことにしましよ。」 ローラたちは大きな、明るい部屋にいた。びかびかの床には手織りのラグが適当に配置して まど まど かべ かべ あって、白い壁にはたくさんの絵がかかっていた。壁じゅう窓で、その窓がそれそれちがった 世界にむかって開かれているように見えた。ローラのかたわらの一枚には銀色の炎の中心部が かかれていた。そのとなりの一枚は、さわやかな明るい色の風景画だ。小さな丘や木々の間に てんざい きらきら光る泉が点在していて、化けものたちがにこにこしながらトランプをしたり、花をつ んだりしていた。背景には大きな人間の顔が描かれていてーーその一部は建物になっているの 目の前に展開される風景をひとりゅううっそうに眺めている。いちばん手前の、短い 羽毛にからだじゅうおおわれた男はフクロウの顔をしていて、その目は額ぶちの外に注がれて いた。が、フクロウの顔と見えるものが仮面なのか、それとも鳥人と呼ばれる類のものなのか、 なら ローラにはわからなかった。この部屋には他にも目を引くものがたくさんあり、それらと並ん で、この絵もじっくりと顔を近づけて見てみたいと思ったが、女主人たちの前では、恥すかし ゆか おか ほのお 160

7. めざめれば魔女

廊下の角をまがって、背の高い白衣の人がこちらにやってきた。さがしていた看護婦だった。 ちょうどよかった。ジャッコの検温などもかねて、ようすを見にくるところだったのだ。 看護婦とローラが病室にもどると、ジャッコはまだ起きていて、ロッカーから出してもらっ たフワフワをかかえ、ケートの顔をしっと見ていた 「この子がほしいと言ったんです。」ケートはすっかりとり乱していた。「親指を吸おうとし たんですけど、注射針がささったままなので、それはやめさせました。」 まもなくジャッコは目をつむったが、たた眠りにおちたというたけだった。動かないろう人 形のような表情は今ではあとかたもなく消えて、顔色こそ悪く、やつれてはいたが、それでも 実に生き生きとして見えた。 「ああ、ジャッコがよくなってさえくれたら。ねえ、ローラ。」少ししてケートが言った。 「よくなるわよ。ジャッコ、母さんの顔見て、笑ってたしゃない。ああいうこと、もうすい ぶんなかったわ。」 「この間の金曜日以来よ。」ケートはちゃんとお・ほえていた。「考えてもごらんなさいな、金 曜日以来すっとジャッコの顔から笑いが消えていたのよ。何年にも感しられるわ。それに、な んたか、あんたも変わった。何があったの ? あたし、気がついてはいたの。でも、今、やっ ろうか ねむ 320

8. めざめれば魔女

してるの。あの人はそっとしておいてほしいって思「てるのよ。今までいっぺんたってそれら しいことはしたことないし。とにかくそっとしておいてほしいのよ。ただ魔女なだけで、実際 に魔法を使うことはまったくないわけ。」 ケートはこんな言いぐさにまどわされるような人ではなかった。これぐらいのことなら、自 分でも言ってのけるときがある。 れんあい 「あの子、いっか、すごくセンチメンタルな恋愛小説を二冊買 0 ていったことがあるわ。」 ケートは思うところあるようすで言った。 「店でおしまいのほうだけ読んで、ふにおちない 0 て顔して、二冊とも買 0 てい 0 たの。」 「それ、自分で読んでるのよ。」ローラはばかにしたように言った。「あたし、モールにある きっさてん いつものあの喫茶店で、あの人が読んでるの、見かけたことあるもの。彼、普段やってること まじよ 見たら、とても魔女には見えないけど、でも、魔女なの。あたしにはわか「てる。」 ・カーライルのことでは、ほかにも一言いたいことはたくさんあったが、ロに出して一一一口 うには不確かだ 0 たので、ローラはたまっていた。そのひとつは、それと知っていてローラに 別の顔を見せることで、日頃学校で見せるおだやかな顔とはまるでちが 0 た険悪な表情に、ロ こうきしん ーラはひどく好奇心をかきたてられていた。 かれ まじよ

9. めざめれば魔女

あくま むま 「夢魔だ ! 悪魔なんだよ ! 」 ローラは顔をそむけていても、ブラック氏がふりむいて通りのむこうからこちらを見ている のがわかっていた。その皮膚がきのうほどしなびていないこと、その笑いからほんのわすかな がら不気味さがうすれたことも。何かが男を変えはじめていたが、ローラはそれがなんである かをあえて考えてみようとはしなかった。 すいり もうタ方で、店内はこみあい、ケートは客に一冊の推理小説をすすめているところだった。 「おもしろいですよ、とっても。もっとも私自身は第一作のほうが好きですけど。」そうケ かみぶくろ ートは言っていたが、本はもう売れて、この本屋の名まえの入った特製の紙袋に今しもすべり こむところだったから、正直に意見を言ったからと言って、べつに損をする心配はなか 0 た。 店に人ってきたローラに気がつくと、ケートの顔がばっと輝いた。そのほっとしたような笑 顔を見て、ローラはじんとうれしくなったが、ケートがローラを見てよろこんだのは自分の目 的にかなったためで、ローラとしてはとてもいっしょになってよろこぶわけにいかないことは すぐにわかった。 「ローラ、ねえ、ローラ。」ケートは青い目を輝かせて言った。「今夜でかけても、 ら ? 」 がお ひふ かがや かがや しし、刀 1 」

10. めざめれば魔女

ムを名ざしして、次には。 ( イブルまで持ち出してさ、そして、し、しまいには、ぼ、ぼくを、 も、もうれつに、ぶ、ぶんなぐりはじめたんた。そ、それまでになく、ひ、ひどくね。むこう は、も、ものすごく、か、からだが大きいだろ。ぼ、ぼくは、や、やられつばなしだった。ま かれ だ小さい時、″クマごっこ″って遊びを彼としたことはあったけれど、こんどのは大人むけの ″クマごっこ″といってもよかった。」 ローラはただ目を丸くして、ソリーを見つめていた。話す声は明るいのに、どもりはじめた ことにローラはびつ ~ 、りしていた。ソリ ーはローラの顔を見てほがらかそうに笑ったが、笑っ くつじよ ~ 、 ているうちにも、昔受けた屈辱にソリーの顔からは血の気が失せ、日焼けさえあせて頬ははれ、 目も暗く翳ってきた。ソリーは今ローラの目の前で自分に起こっていることを知っているのだ きおく ろうか、とローラは気になり、表面どうということのないふりをしていても、記憶が顔つきを 変え、言い方まで変えていることにまるで気づいていないのではないか、と思った。 とっ・せん こ、ころそうと : : : 」ソリーは突然つつかえて、 ぎんちょう 話せなくなった。ソリーは顔をしかめ、目をつむって、そのうちゃっと、緊張はしているもの の、それでも落ち着いた声でしゃべり始めた。「ぼくは殺そうと思えば殺すこともできたかも しれない。だけど、こ、こわかったし、それに、頭の中では、そうなってもやつばり、ち、父 かげ 208