☆農業でのはたらき 土の中の動物は , 食べものを求めたり , 寒さをさけたりして , 土 の中を上下にも , 水平にもトンネルを掘って動いています。とくに こんちゅう 、ミズなどは , 地表から昆虫の死体や落ち葉など アリ , シロアリ , を地中深くへ運び , 反対に , 地中深くの土を地表へ運びだしていま す。これは , 土をひっくりかえし , 土と落ち葉をませあわせている ことになります。 これによって , 土の中深くまでトンネルが掘られ , すきまがたく さんでき , ここに空気や水が入ります。自分でトンネルを掘れない 動物も住めるようになります。より土がやわらかくなり , 深くまで 空気が入り , そこに水もたくわえられるということになるのです。 これによって , 植物はより深くまで , 根をはることができ , 養分を せいしつ きゅうしゅう 吸収できるのです。つまり , 土の中の動物が , 土の性質を , 植物や 作物が育ちやすいように , 改良してくれているともいえるわけです。 こんちゅう また , 地表の落ち葉や , 昆虫の死体などを , 土の中深くに運びこん でくれますので , 肥えた土にもなっています。 ひりよう これは , 土をたがやしていること , 肥料をやっていることといっ きゅうしゅう しょです。植物や作物は , より深くまで根をはり , 養分を吸収して , しゅうかく 生育がよくなり , 作物の収穫もあがるということになります。 この土の中の動物のはたらきに注目して , オーストラリアではミ 58
☆季節ごとの変化 同じ場所で , 春・夏・秋・冬など , ちがた季節に土を掘。て , 子即とで種類や数がどう変化するか , そして , 深さごとに 変わるかもみてみましよう。 地上では春から秋にかけては , いろんな動物が動きまわり , 飛び まわっていますが , 冬にはほとんどいなくなります。たとえば , セ ミやコガネムシなども , 夏だけは成虫が地上にいますが , 秋から春 ようちゅう にかけてはまったくいません。でも , それらの幼虫は , 土の中に それもいつでもいるのです。それだけに , 土の中の動物の季節ごと の変化は少ないはすです。 冬になると 地上には動物が めつきり減るけれど 土の中にはたくさん 動物がいるんだ ロロ 47
いるのです。これは , 先にも説明したとおり , 自然のしくみをこわ し , 植物や作物の生育を悪くすることにもなるのです。いろいろな かんきよう 作業 , 環境の変化によって , 土の中の動物がどのように変化してい るか , どうへっているのか , 確かめてみることも大切な研究なので 生きものに親しみ , 生きもののことをよく知らないと , 生きものの さいしゅう こんちゅうさいしゅう 昆虫採集や植物採集をしたり , ほんとうの味方にはなれません。 どじよう こんな土壌動物調査をしたりして , 自然のしくみをよく理解し , 自然 りかい 0 0 の大切さを学んで , いま , 残っている自然 , 動物や植物をどうした らまもれるのかを考えてみましよう。 0 す L 67
じゅみよう なかまは数年生きますが , 、ミズの寿命は , シマミミズ , サクラこミズなど , ツリご フツウミミズ , クソミミズ , ヒト らんばう ミズの ツモン 秋に卵 冬をこしたあと , 春に卵を産んで死ぬと あたた しかし , 寒い地方と暖かい地方で , 同し生 装置を使って採集したとき , たくさんの , それもさまざまな動物 が , 土の中から出てくることにおどろかれたはすですが , これらは しいく 50 専門の研究者でも知らないことかもしれないのです。 せんもん にちがいありません。小さな観察かもしれませんが , それはまだ , きっとびつくりするようなできごと , おもしろい生活が観察できる ろいろと工夫しないといけませんが , もし , うまく飼育できれば , しいく ら , 生きた動物の生活が観察できます。動物ごとで , 飼育方法もい しいく アルコール液の中にしすんでいて動いてくれません。でも , 飼育な 、ミズなど , フトミミズのなかまは , 春に卵包からかえり , じゅみよう さいしゅう そうち 活をしているはすがありません。 いうみしかい寿命です。 を産んで死ぬ , あるいは ,
ミズを牧草地にはなしてふやし , 土を改良してもらって , 牧草の収 せつきよくてき 量をふやす事業を積極的にやっていますし , おなじようにヨーロッ かんたくち パでは , 干拓地に、ミズを移植して , 土を改良してもらい , 農地や 森林にしているほどです。 0 一番深いところへもぐる動物 土壌動物は , 表面に近いところはど多いといいました これは , 落ち葉 さんそ など , 食べものがあること , 動きまわれるすきまが多いこと , 酸素がしゅ うぶんにあることなどによるものですが , 土壌動物の中には , すっと深い ところまでもぐるものがあります。 きんこう かわいたところにごくふつうにいるクロナガアリ 都市近郊の草地など , は , 世界で一番深いところに巣をつくるアリだといわれています。関東地 方の土の深くたまっているところでは , このアリは深さ 4 m までもトンネ ルを掘ります。深い土の中では , 一年中はとんど温度が変わりませんから , ようらゆう 冬のあいだも幼虫は育っているといいます。もちろん , 夏のあいだに草の 実など , たくさんの食べものをトンネルのところどころにたくわえてある のです。 どじよう どじよう ほ 59
反対に大きな動物では , オダイショウやシマヘビ , 2 m 近くはあるでしよう。つまり , 土の中には , 数ミクロンの小さ トカゲやカナヘビがあります。ヘビなら 冬ごもりのために土の中に入ってくるア 30 トカゲ〔 15()mm 〕 せきつい どります。陸上で生活する動物は , みんな土と深い関係を持ってい 上を歩き , 土の上におりてきます。そして , 死ねば , 死体は土にも また , ゾウやトラにしても , ツルやカラスにしても , みんな土の 哺乳類までもの , はばひろい範囲の動物が住んでいるのです。 はんい ほにゆうるい らは高等な動物の哺乳類です。土の中には原生動物から脊椎動物の はにゆうるい ばれています。一方 , 土の中には , モグラやネズミもいます。これ アメーバやミドリムシは , もっとも下等な動物で , 原生動物とよ げんせい なものから , 2 m もの大きな動物までがいることになります。
しつは , 木の上のケムシやシャクトリムシを食べるのと同しように 野鳥は , 地表や地中の浅いところにいる動物も , かなりよく食べて じゅじよう いるのです。土の中にたくさんいる動物に , 地上・樹上のより大き い動物 , けものや鳥が目をつけるのは , 当然でしよう。野鳥のほか にも , トカゲ , ヘビ , カエルなどのは虫類・両生類はもちろん , タ ヌキやイノシシなどのけものも , いろんな土の中の動物を食べてい じゅじよう ます。樹上・地上の動物と , 地中の動物とは , 深い関係にあるので ぶんかいしや この地球は , 生産者 , 消費者 , 分解者の三つがうまく組み合わさ やくわり って成り立っています。土の中の動物も , 自然の中で大切な役割を はたしていることが , わかっていただけたと思います。 どじよう やくわり その大切な役割をはたしている土壌動物が , へったり , いなくな 地表でえさをさがす シジュウカラ 54
落ち葉のあるところでは , 落ち葉の層だけを先にビニ さいしゅう にいる動物を , 別に採集したほうがいいでしょ の上に落とし , う。落ち葉があるところでは , ここに一番たくさんの動物がいます。 アノレコール液 ( 70 ~ 90 ノヾー 10cm ごとに掘って , 出てきた動物は , セント ) の入ったびんに入れ , どの深さから出てきたものかわかる ように , ラベルに書いておきます。 さいしゅう この方法で採集できる動物は , 目でみえ , ピンセットでつかまえ られる大きなものです。もちろん , 土をよくみていると , 1 mm, あ るいは , もっと小さな動物 , たとえば , ダニやトビムシがたくさん 目につくはすです。しかし , これらを全部ひろっているとたいへん そうち ですし , これらの小さな動物は , あとで述べるツルグレン装置を利 さいしゅう さいしゅう 用すると , うまく採集できますので , ピンセットで採集するこの方 さいしゅう 採集できた大形 土壌動物 どじよう
・主な参考書 『土壌動物学』北隆館 ( 1973 ) 冂木淳一 北沢右三 : 『土壌動物生態学』 共立出版 ( 1973 ) 北沢右三 ( 編 ) : 『土壌動物生態研究法』共立出版 ( 1977 ) 中村好男・藤川徳子・小林達治 : 『土壌生物を考える』 環境科学総合研究所 ( 1979 ) 『自然保護ハンドブック』東京大学出版会 ( 1976 ) 沼田真 ( 編 ) : 田村浩志 : 『土壌動物の観察と調査』 ーサイエンス社 ( 1981 ) 渡辺弘之 ( 監修 ) : 『土壌動物の生態と観察』築地書館 ( 1973 ) 渡辺弘之 : 『土壌動物の世界』東海大学出版会 ( 1978 ) 渡辺弘之 : 『土壌動物のはたらき』海鳴社 ( 1983 ) 渡辺弘之 : 『ミミズの生活を調べよう』さ・え・ら書房 ( 1983 ) ・名前を調べるための参考書 北隆館 : 『新日本動物図鑑』全 3 巻 ( 1971 ) 北隆館 : 『日本幼虫図鑑』 ( 1981 ) 素木得一 『幼虫の検索』北隆館 ( 1981 ) 63
もくじ はしめに さいしゅう 1 . 採集してみよう・・ さいしゅう 手 ( ピンセット ) で採集する ( 9 ) / ツルグレン装置をつ さいしゅう ちゅうしゆっ くって採集 ( 抽出 ) する ( 7 4 ) / ダニ ( 7 9 ) / トビムシ ( 2 の そうち さいしゅう ちゅうしゆっ / べールマン装置をつくって採集 ( 抽出 ) する ( 22 ) 2 . 土の中の動物を調べるときの注意・・ とくちょう 3 . 土壌動物の特徴・・・ からだが小さい ( 引 ) / からだは細長い円筒形 ( 33 ) / か らだの色が白い ( 33 ) 4 . 調べてみたいこと・ かんきよう ひかく 環境のちがうところでの動物の比較 ( 38 ) / 深さによるち どじよう がい ( 39 ) / 季節ごとの変化 ( 4 幻 / 土壌動物の生活を調 べてみよう ( 42 ) / 地方ごとでの動物のちがい ( 43 ) こわい動物・・ 5 . 土壌動物を飼ってみよう・・ しいく ヒメフナムシの飼育 ( 46 ) オカダンゴムシ , ワラジムシ , しいく ミズの飼育 ( 49 ) 4 そうち ・・ 25 ・・ 29 ど えんとうけい ・・ 37 ・・ 45 ・・ 46 どじよう か