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検索対象: 勉強法が変わる本 : 心理学からのアドバイス
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1. 勉強法が変わる本 : 心理学からのアドバイス

182 基本的に学術研究の場であり , 学生は学問的な考え方 や方法論を学ぶのが本来の姿である . また , 現実的に 考えてみても , 社会での実務経験を踏まえて職能に応 じた教育ができる教員が大学に多いとは思われない . もちろん , 社会が大学に何を期待するかは , 時代に より , 状況により変化する . 進学率が上昇して大衆化 された大学において , 従来のアカデミズム中心の姿勢 を改める必要があるというのが , 樋口氏の主張でもあ るだろう . 大衆化された大学では , 確かに学術や教養 以外の実用的なものを求める学生は多いに違いない しかし , だからといって大学側が基本的な性格を変え なくてはならないことにはならない . 最近は実用的な資格取得のために , 大学に行きなが ら , 専門学校にも通うダブルスクールの学生が増えて きているという . とりわけ就職難の時代になて , 自 分の付加価値を高めるための努力を大学生も払ってい るのだろう . 学生にしてみれば , そこではるかに職能 に密着した教育が受けられるのである . 大学側にして みても , 多様な学生の = ーズに応じられるような職能 的な科目をそろえるのはスト上たいへんなことであ り , それらはすべて学費などの負担となって学生に返 ってくるのである . 大学はけして専門学校ではない . 職能的な教育と いう役割を大学が担うことは , むしろ社会における大 学の本来の機能を弱めてしまうことになりかねない . 学生は , それを承知したうえで大学にはいるべきであ

2. 勉強法が変わる本 : 心理学からのアドバイス

62 であるから覚える必要などまったくない . しかし , これ を見れば , タ焼けに映えて飛ぶトンボの姿がイメージさ れて , 覚えるように言われなくても覚えてしまうのでは ないだろうか . こんどは , 形や音だけでなく意味もわか ったからである . 人間の情報の処理には , 形態的な処理 , 音韻的な処理 , 意味的な処理があり , その順番に処理が深くなっていく とされる . 記憶がどれくらい残るかは , どれだけ深い処 理をしたかの副産物であるとするのが , 「処理水準説」 という考え方なのである . 浅い水準での処理をただくり 返しているだけでは , より強く記憶にとどめておくこと はできない ( 図 2 ー 7 ). 君たちは , 覚えようとして何回もリ , 、一サルしてもす ぐ忘れてしまうこともあれば , 別に覚えようとしていな いのによく覚えているといった経験があるだろう . 処理 水準説によれば , それは処理の深さが違っていたからで ある . 覚える意図がなくても , 深い意味的な処理をした ことは自然に記憶に残る . 数字列を記憶しようとすると 形態的な処理 「ナンカフクサツナカタチ」 →音韻的な処理 教師とは・・・ 「よみかたはキョウシかな」 意味的な処理 「先生のことだよね . そういえば , ボクの先生は , 図 2 ー 7 処理水準を深めることによって忘れにくくなる 入力情報 処理水準の深まリ

3. 勉強法が変わる本 : 心理学からのアドバイス

4 問題を解く 145 から , 総合的学習を実施している学校もあるので , 読者 の中にはある程度経験している人もいるかもしれない . 「与えられた問題を短時間で解く」というこれまでのテ ストでの問題解決とはかなり違う力がそこでは要求され る . 大学にはいってゼミや卒業研究をするときにも , 社 会に出てからいろいろな問題にあたる場合にも , 総合的 学習で身につけたカは役に立つはずだ . けっして「受験 には直接関係ないから」といっておろそかにしてほしく ない . この本では , 残念ながらそうした「問題解決学習」に ついて , 心理学的な話をすることはあまりできない . ま 小・中・高校でそれほど行われていないし , 研究も 進んでいないからである . ただ , 少なくともはっきり言 えることは , 複雑で実践的な問題になるほど , 多くのス キーマや解決法に裏づけられているということだ . ぼく が出会う大学生 , 研究者 , 社会人でも , いい仕事をして いる人は , 書物や直接的な経験を通じて豊かな知識をも ち , 問題の考え方のセンスがいい . それは , 学校での基 礎的な学習を通じて練られてきたという面が多分にある と思う . もう少し正確に言うと , 「テスト勉強をしていれば十 分というわけではないが , テスト勉強だからといってバ 力にして , 高校で習うような知識の習得や問題の解決す らしなかった ( できなかった ) 人が , 社会に出て急に優れ た問題解決的な仕事をすることはめったにない」という ことだ . そういう意味では , 高校までの勉強で行う問題

4. 勉強法が変わる本 : 心理学からのアドバイス

175 Science Window 説得の免疫効果と両面的コミュニケーション ニケーションについては , 社会心理学で 説得的なコミ 多くの研究がある . 人は , それまで疑ったことのないよう な自明の真理と思っていること ( たとえば , 「戦争は悪いこ とた」とか「学校は必要な教育機関だ」など ) は , いざ反 駁されると急にひっくり返ってしまうことがあると言われ ている . 弱い反駁に出会って , それに再反論して克服した 経験があると , なかなか変化しない強固な信念になるのだ . これを免疫のはたらきになそらえて , 免疫効果と呼んでい る . これを先取りして , 自分の議論の中に , 反対論も含めた 上でそれを考慮に入れて自説を展開するのが両面的コミュ ニケーションである . 免疫効果を考えると , 自分の意見の 利点だけを一方的に述べる一面的コミュニケーションは , 反論にさらされると弱く , 相手が思慮深い人だとかえって 疑われてしまうことが想像できるだろう . 両面的コ ケーションは , 書き手がそれだけ賛否両論を考慮して検討 していることの証明にもなる . ただ , ズルイ書き手や広告 は , つまらない反対論たけをとりあげて , 十分検討したよ うなフリをしていることがあるから , 注意しなくてはいけ ない . ②その理由 , メリットについて述べる . ③反論の可能性に言及し , それを検討して再反論す る . ④あらためて自分の主張をまとめる . というのが典型的なパターンであることを知っておくと いい . 小説では , 次はいったいどうなるのだろうかとワ クワクしながら読み進んでいくわけだが , 論説文では何 が言いたいのかをますはっきりさせることのほうが大切

5. 勉強法が変わる本 : 心理学からのアドバイス

197 索 引 処理 61 意味的な - ー 音韻的な 形態的なーー 処理水準説 61 人工知能 95 推論 90 スキーマ 51 , 94 先行オーガナイザー た行 短期貯蔵庫 58 知覚像 76 知識 90 言語的 社会経験的な 内容に関わる 長期貯蔵庫 60 調節 50 , 52 直後記憶の範囲 59 対連合学習 46 同化 50 トップダウン処理 94 な行 内化 苦手単語集中法 33 日常モードの学習 69 ・マジカノレナンノく 認知主義 51 , 52 認知心理学ⅳ , 57 認知的不協和 165 あ行 暗記主義 25 一面的コ 175 音声化 9 りんり 0 ニケー ション ュ 55 か行 外化 9 解の探索 143 解の評価 143 学習観 1 , 25 学問モードの学習 69 過剰学習 35 干渉説 63 関連づけ 53 関連づけ法 39 記憶 45 の貯蔵庫モデル 既有知識 49 系列学習 46 結果主義 25 検索失敗説 63 減衰説 63 構成要素法 41 行動主義 45 合理化 165 さ行 刺激 45 集中学習 47 情報処理 57 96 91 92 92 58 9 59

6. 勉強法が変わる本 : 心理学からのアドバイス

95 Science Window 人間とコンピュータのもっスキーマ 1960 年代に「人工知能」という分野が発展してきて , 手書き文字の認識 , 文章理解 , 翻訳などをコンビュ ータに やらせようとしたときに , ポトムアップ的なやり方だけで はどうしても行き詰まってしまった . そこで , コンヒ。ュ タにも人間のもつ「常識」のような知識をスキーマとして もたせ , トップダウン処理をとり人れていくという方向へ と大きくシフトしていったのである . こうして , 1970 年代には , 人間がどのように知識を使 っているかという認知心理学の問題と , コンビュータにど のように知識をもたせて人間らしい処理をやらせるかとい う人工知能の問題が一体となって研究が進められていく . この難問は , 今日まですっと続いている . 鉄腕アトムやド ラえもんのように人間的で自然な会話ができるまでには , まだまだ時間がかかりそうである . 世界を認識して情報を取り入れている . とくにこのトッ プダウン処理は , コンビュータにはなかなか真似のでき ない人間らしいやり方である . 文章理解の場合も同様だ . スキーマを呼び出すまでは文章の断片的な情報をポトム アップ的に処理しているが , 一度スキーマが呼び出され ると , それを使ってトップダウン的に解釈していく . も し整合的な解釈ができなければ , あらためて別のスキー マを使って解釈を試みるといった試行錯誤をするのであ る . ところで , 学校での教科の学習のように , あまり詳し く知らない内容を学ぶときには , スキーマを使うことが できない . しかし , 何らかの枠組みはやはりあったほう

7. 勉強法が変わる本 : 心理学からのアドバイス

55 Episode Window 語呂合わせを活かす 暗記するのに語呂合わせを利用するというのは , 今さら 紹介するまでもなくだれでも知っているし , 試したことが あるのではないだろうか . 数学なら , V ツ - = 1.41421356 ・ CS= 1.7320508 ・ ・ ' 竈 = 2.2360679 ・ V 2.44949 = 2.64575 ・・ V ユ j- = 3.1622 ・ ( ヒトヨヒトヨニヒトミゴロ ) ( ヒトナミニオゴレヤ ) ( フジサンロクオームナク ) ( ニョョクョク ) ( ナニムシイナイ ) ( ヒトマルハミイロニナラブ ) という平方根の値とか , 化学なら周期表の「水兵リーベ , ぼくの船 , ・・・」などは有名で , 親や先生も紹介してくれる たろう . しかし , こういう定型的なものではなく , 最もノくラエテ ィに富んでいるのは , 歴史の年号である . 本屋に行くとじ つにいろいろな本が出ていることがわかる . もう書名は忘 れてしまったが , ぼくが大学受験のときに使って気にいっ た世界史の年号の本があった . それのいいところは , その 事件にまつわるおもしろい歴史的ェビソードがマンガ入り で出ていて , それに関連づけた語呂合わせになっているこ とだった . 読んでいて楽しいし , 自然に頭にはいってくる のである . 心理学的に見れば , 語呂合わせは , 音声化と有意味化と いう初歩的なテクニックを使ったもので , 教科の本質的な 理解に至っているわけではないから邪道だという人もいる ようた . それはもっともだが , メモのかわりのようなもの なので , ぼくはそれほど目くじら立てるほどのことはない こうしたテクニックで覚えたこと自体に価 と思っている . 値があるわけではない . それはメモを見て思い出したくら いのことなのだから . でも , メモは便利だ .

8. 勉強法が変わる本 : 心理学からのアドバイス

Science Window 漢字圏の国民に特徴的な空書行動 机の上や空中に , 指で文字を書く動作を空書というが , これは , 漢字圏の国民に特徴的な行動である . 佐々木正人 と渡辺章という心理学者は , 空書行動に関する一連の調査 や実験を行っている . たとえば , 「日」が 3 つでどんな漢 字ができるか , というような問題を出されると , 日本人な ら空書を行って考えてから「晶」という答を出すという人 がほとんどである . おもしろいのは , 英単語の問題で , 「 t ロ mor ロロ w はどんな単語か」というようなクイズでも , 日本人は空書をする人が多いという . こんな行動は , 欧米 人にはまず見られないらしい . 漢字という複雑な文字をた くさん使う民族では , 手の運動的な感覚を利用して覚える という方法が , 伝統的に有効なものとして使われているの である . いだろう . 勉強の中でも , 「こればっかりは , ひたすら練習する しかない」と多くの人たちが思っているものがある . そ れは , 漢字 , 計算 , 英単語である . しかし , これすら , さまざまな学習方法があるし , 当人にとっては思っても みないところで遅れをとっているのだ . ぼくが学習相談 をしていて , 「これでは , いくら時間をかけても , あま り効果が上がらすに , いつかいやになってしまうだろ う」と思うことが少なくない . 漢字についていえば , じつは , 日本の小学校で教え方 がある程度確立されているので , それを着実に行えば , あまり差が出ないはずなのである . 基本的には , 第 1 に 正しい筆順でしつかり書くことである . ただし , 正確に

9. 勉強法が変わる本 : 心理学からのアドバイス

146 Science Window 創造的な問題解決を行う条件は何か 心理学では , 「創造性研究」という分野があり , パズル のような問題でどのように解を発見するかのプロセスを観 察したり , 創造カテストを開発したりする . また , 天才と いわれる人たちのェビソードを調べたり , 研究所の技術開 発チームがどのように仕事を進めるかを調べたりもする . こうした研究からは , 一般の人々がつい見落しがちにな ってしまうことが指摘されている . 創造性というと , 自分 1 人で自由に考えてアイデアがいきなり湧いてくるような イメージがあるが , けっしてそうではない . アインシュタ インの相対性理論にしても , ビートルズの革新的なロック にしても , 伝統的な枠組みの中にどっぷりとっかる時期が あってこそ生まれてきたというわけである . さらに , 創造 とは , 異なる領域のものを新たに結びつけることなので , やはり知識が有効なはたらきをすることや , 独創的なもの を尊重し奨励するような風土がその社会に必要なことなど も言われている . 日本の武道や芸能では , 「守 , 破 , 離」ということが言 われる . 伝統的な型を守ることからはいり , それを越え , 自分独自の境地に至るということたが , 創造性研究とも通 するところがあっておもしろい . 解決というのは , 非常に狭いものではあるけれども , よ り複雑な問題を扱うための基礎訓練のようなものになっ ているのだろうとぼくはうすうす考えている . 本章のまとめ ( 1 ) 数学や理科などの問題解決では , 問題を理解する過程と , こで大切なのは , 問題ス 解決方法を探索する過程とがある . キーマという問題のパターンを知っておくことと , 新たな問題

10. 勉強法が変わる本 : 心理学からのアドバイス

184 るし , さらに実用的な知識を身につけたい者は , 自ら 積極的に大学以外の場を活用していくというのが , 望 ましいあり方だと思う .