「次は、リュウくん、きみの番です。」 ゅび と、マッモトはリュウを指さす。 ころ かいちょう 「マリモさんが殺されるのを見て、きみはかっとなって、会長にとび 」カいちょう かかっていく。でも、子どものきみが会長にかなうはすがない。逆に あたまゆかつよ 投げとばされ、頭を床に強くたたきつけられて命を落とすことになる。 かわいそうにねえ。」 てあし リュウが射るようなまなざしでマッモトをにらむ。手足がしばられ ほんき ていなかったら、本気でとびかかっていたかもしれない。 。力いちょう 「さて、会長、お待たせしました。」 まえ マッモトはおじいさんの前に立ち、ポケットからナイフをとりだ つぎ ばん & やく 162
ちか に近づいてきた。 おも やくそく おも 「約束を思いだしていただくために、この子たちにちょっといたい思 いをしてもら、つ「とにしましよ、つ。」 ま 「待て。何をするつもりだ。」 かいちょう ひめい 「おわかりでしよう。さっき会長が悲鳴をあげられたようなことです。 もうおわすれですか ? 」 ち 「やめろマッモト、おまえは血まよったのか。」 ち 力いちょう 「そうかもしれませんね。でも、わたしを血まよわせたのは、会長、 あなたですよ。」 お しいおわると、マッモトはリュウをかかえあげ、部屋の奥に置いて こ へやおく 142
、力いちょう 「いいですか、会長。」 まえ と、マッモトがふたたびおじいさんの前に立ちはだかる。 ぜん かいらようぜんざいさん 「わたしは会長の全財産をいただ「うとしているわけじゃない。以前 とち たてもの のお約束どおり、この土地と建物をいただきたいと申しあげているだ けなんです。おわかりいただけませんか ? 」 おぼ 「そんな約束などした覚えはない。」 め と、おじいさんはすごい目でマッモトをにらむ。銅像よりもコワイ かお ) 目 ( 。こっこ 0 寺厚事 / キ / 「そうですか。しかたがありませんね。」 む と、マッモトは向きなおり、ゆっくりした足どりでマリモたちの方 やくそく やくそく あし も、つ A 」、っそ、つ 14 1
おも 「れしきのことで、わしがへこたれると思っておるのか。よく かねざいさん 聞けよマッモト、わしは金も財産もおしくない。だが、おまえごとき もの お 者のいいなりになるほど老いばれてはおらん。まちがえるな : 「おじいさんだ。」 ′」え と、リュウがたまりかねたような声でいう。 「あいつ、おじいさんをどうするつもりなんだ。」 と き こえ くつおと 靴音が止まり、ふたたびマッモトさんの声が聞こえてくる。 ・かいちょう わる 会長、ものわかりが悪くなりましたね。いささかポケられたん じゃありませんか ? しかたがありませんね。じゃあ、今度は「ちら ゅび の指をこうやって : : : さあ、いきますよ ! 0 110
「これですね。」 かしきんこ 「そうだ。それがわしの貸金庫のカードとカギだ。必要なものは全部 その中にしまってある。ほしければ、株券や金も持っていくがいい」 「 ) よほ、つ . こえ カ と、みようにかすれた声を出し、マッモトの目つきが変わった。 かいちょうおも ひとよ 「会長も思いのほかお人好しですなあ。それとも、ヤキがまわったの 、かな ? ・」 「ど、つい、つことだ。」 「お役ごめんということですよ。もっとはっきりいえば、この世から めいわく 消えていただく。これ以上、生きていられては迷惑ということです。」 0 かぶけんかねも め ひつよう ぜんぶ 156
さま 様なんかじゃなく、本当はいいおじいさんじゃないのかしら : 、かいちょう 「さて、会長、あいさつはそのぐらいにして、そろそろ本題にもどり 土びー ) よ、つ。」 まえ マッモトが短いツェのようなものを持ち、おじいさんの前に立ちは 十 / , 刀事 / 「ちょっと待て。」 ′、ちょう と、おじいさんが強い口調でいう。 、かんはりい もんだい 「これは、わしとおまえの問題だ。子どもたちは関係ないだろう。ま きぞえにするのはやめたらどうなんだ。」 わら マッモトはマリモたちの方をふりむき、うす笑いをうかべる。 みじか ほんと , っ つよ ほ , っ ほんだい 139
わる おも 思った。きっとあの銅像のイメージが悪いんだわ。あんなもの、どこ かにかたづけてしまえはいいのに : 「リュウくん。」 と、マリモはよびかけた。 げんきだ 「おじいさんの話、聞いたでしよう ? よかったね。元気出すのよ。 わかった ? 」 「うん。マリモさん、おじいさん、ありがとう。」 おと そのとき、とびらのひらく音がして、マッモトがもどってきた。 そん」く、つ 孫空のぬいぐるみを、とてもだいじそうにかかえている。 にんぎよう いんかんしよるい 、んいちょう 「さあ、会長、持ってきましたよ。印鑑と書類、こんな人形のどこに と、っそ、つ 0 154
「ああ : そ、っそ、つりよく かいちょう 「さすがの会長も、わたしの想像力にはおよばないと見える。よろし 教えてさしあげましよう。」 そんごくう マッモトは、さっきすてた孫悟空のぬいぐるみをひろい、短く口笛 ゆか をふいた。そして、床にちらばる道具をけとばしたりしながら、いか たの にも楽しそうに話しだす。 ころ さいしょ 「ます最初に、マリモさん、あなたを殺します。こんなふうに。」 まえ と、マッモトはマリモの前で立ちどまり、手に持ったぬいぐるみの 首をしめてみせた。 かんたんころ じようだんじゃないわ。そんなに簡単に殺されないわよ : : : と、マ おし みじか くちえ 160
ものおと ぶきみ 何かをおしつぶすような無気味でにぶい物音がして、その直後、お き くる ひめい じいさんの苦しそうな悲鳴が聞こえてきた。 くる 力いちょう まだですよ会長、これからが本番でしてね、もっともっと苦し しいですか、ほらほらほら : んでいただかないと : ひめい おじいさんの悲鳴がしだいにするどく大きくなる。 みみ たまらすにマリモが耳をふさごうとしたとき、とっぜん、リュウが りようプ、 てんじよう、つら おおごえ 両手でカまかせに天井裏をたたき、大声でさけびだした。 「やめろ ! やめろ ! やめろー ちから ほんばん おお 0 1 1 2
おも ちか おも リモは思う。近づいたら、かみついて、けとばして、思いっきり泣き さけんであばれるんだから : 「もちろん、じっさいに手をくだすのはこのわたしです。」 と、マッモトは得意そうにつづける。 おも けいさっ 。力いちょう あの方には、 「しかし、警察には会長がやったように思わせる。 しゆみ ひと 人にいえないようないかがわしい趣味がありましてねえ。ごらんくだ へんどうぐあっ べや こんなかくれ部屋をつくって、変な道具を集めて、いったい何 しよう、け・ん をなさっていたのか : : と、まあ、そんな証言をするわけです。」 ヾこいまじん かお 聞きながらおじいさんが顔をしかめる。怒る大魔神になるのを必死 でこらえているのかもしれない。 カ」 ひっし 161