水 - みる会図書館


検索対象: よみがえれムサシトミヨ
93件見つかりました。

1. よみがえれムサシトミヨ

「おっと、巣があった」 大人の声がしました。 見ると、ひきあげられた水草に、ムサシトミョの巣がありました。 巣をこわさないよ、つに、そっととりはすし、ビーカーに、つつします。中に たまご 小さな卵がたくさんはいっています。 たちまち、子どもたちがとりかこみます。 さやだ さいたまけんくまがやし ここは、埼玉県熊谷市にある、佐谷田小学校のふれあい広場です。 いま、ふれあい広場の池で、去年 ( 一九九三年 ) の十月にはなしたムサシ えっかちょ、つさ トミョが、この一年間で、どれだけふえたかをしらべる越夏調査がおこなわ れています。 ムサシトミョは、トゲウォ科の魚で、水のなかで鳥のように巣をつくり、

2. よみがえれムサシトミヨ

しいくさいはいしし じようせんきみお こわせゅうじ 飼育栽培委員を代表して、六年生の常泉喜実男くん、小和瀬裕司くん、 ぬまがみなおと しなだひとみ ゃないゅうこ 沼上直人くん、品田瞳さん、矢内悠子さんの五人が、二百びきのムサシトミ ョを、川の流れのなかに、ゆっくりとかえしてやりました。 まんぞく みんな、満足そうに、 いつまでも川をのぞきこんでいます。 もとあらかわ 元荒川の水がきらきらひかりながら、ムサシトミョを流れのなかにつつみ こんでいきます。

3. よみがえれムサシトミヨ

ミドロなどをまきつけていきます。こんどは、そこへ、こまかくちぎった水 草を、ロにくわえてはこんでくつつけていきます。 すこし形ができると、そのかたまりに体をおしつけるようにして、ぐるぐ るとおよぎまわります。 ねんえき おしりから、ねばりけのある粘液のようなものをだして、水草と水草をく せっちゃくざい つつけているのです。この粘液が接着剤のやくわりをはたし、巣をうまく かためるのです。 二回三回と回転しながらかためると、また水草をはこんでロでおしつけて かためます。 おなしような行動を、なんどもくりかえながら、二日間かけて、ようやく すかんせい ひとつの巣を完成させました。 あな 巣は、ピンポン玉くらいの大きさで、まん中に小さな穴がひとつあいてい 4

4. よみがえれムサシトミヨ

しいます。 水がきれいで、魚たちがまだたくさんいた、 です。 ま、このあたりには、ムサシトミョは一びきもいません。 ところかい もう一度、たくさんのムサシトミョがよみがえることを願って、久下小学 じんこうぞ、つしよくしいくかんさつかつど、つ 校の人工増殖と飼育観察の活動ははじまりました。 クジャク、ウサギ、カメ、 久下小学校では、これまでにも、ニワトリ、 しいく しオたくさんの生きものを飼育してきました。 ト、キンギョ、タナゴと ) っこ、 こうした生きものの世話は、飼育委員を中心に、二年生以上の全員が、ク ラスごとに当番でおこなっています。 しいく 飼育委員たちだけにまかせるのでなく、先生や生徒みんなが、小さな生き ものたちのにおいやぬくもりを、じかに感じてほしいからです。 しし 一九五〇年代はじめころの話 せいと ねが

5. よみがえれムサシトミヨ

ため、その生活ぶりを見ることは、ほとんどできません。 集会では、ムサシトミョが、水のなかでどんな生活をしながら、その一生 すいさんしけんじようけんきゅういん をすごしているのかなどを、さいたま水族館や水産試験場の研究員の人に、 くわしく教えてもらいます。 かんきよ、つ また、人間とムサシトミョかい っしょにくらしていける環境をつくる 、ぎよ ) よ、つきよ、つ」、つくみあいきよ、ついくいいんかい にはどうすればいいのか、漁業協同組合や教育委員会の人たちにも話し てもらいます。 こうしたとりくみが、久下小学校のみんなの気もちをひとつにしています。 生きものたちを育てることをとおして、ムサシトミョを守ることの大切さ が、ひとりひとりの心のなかにめばえているのです。 1 レい / 、しし きぼ、つ 飼育委員になることを希望する子どもたちは多く、クラスの希望者が話し あってきめているほどです。 109

6. よみがえれムサシトミヨ

と、つきよ、つさいたま ねったいぎよてん 。ットショップや熱帯魚店で、 このころ、ムサシトミョは、東京や埼玉のヘ オスとメスのそろいで四千円から五千円で売られていました。 とりにくる人たちが、水田のあぜ道をふみくすしたり、川の水草をひきぬ いてすてていったりして、地元の人とのトラブルもあいつぎました。 もとあらかわきんりよ、つく しかし、こうしたことがあっても、元荒川が禁漁区として保護されてい ないために、だれもとめることができないのです。 もんだい しかし、しつは、ムサシトミョにとって、もっとしんこくな問題がおきて いました。 川の水のよごれです。 もとあらかわ じゅ、ったく 元荒川のまわりには、あたらしい住宅がたくさんできました。しかし、 こうきようげすいどうせつび せいかつはいすい 公共下水道の設備がつくられていなかったために、家庭からの生活排水が、 じかに元荒 Ⅱこ流れこんでいたのです。 5 5

7. よみがえれムサシトミヨ

たまご ちょっ 巣の入り口に、卵のつぶが、かたまりになって見えています。大きさは直 一ミリくらいの小さなものです 径か一、一 さんらん オスは産卵でこわれかけた巣を、つくったときとおなじようなやりかたで あな なおしました。入り口の穴は、前より小さくなっています。 あな すしゅうり 巣の修理がおわると、オスは穴の近くに立ちどまって、胸びれを前後には げしくふるわせはじめました。 これは、ファンニングといわれる行動です。卵に、しんせんな水をおくり さんそぶそく つづけて、巣のなかの卵が酸素不足になったり、高温になってしまうのをふ せいでいるのです。 びようかん オスは、二、三十秒間やってはすこし休み、またはしめるといったぐあ いに、ファンニングをくりかえします。 オスが、巣に近づいてくるほかの魚を、おつばらっています。 たまご むな

8. よみがえれムサシトミヨ

う卵のかたまりか、いくつかはいっている巣もあります。これは、おなじ巣 8 5 二、三びきのメスが卵をうむためではないかと考えられます。 す たまご 矢辺さんは、巣からとりだした卵を、ステンレス製の小さな網にいれて、 たまヾこ ふ化させる方法をとりました。とりだした卵はぜんで百五十っくらいあ ります。 たまヾこ その卵に、ほそいビニールホースで水を流してやります。オスのファンニ ングのかわりです。 いのち 人工ふ化のよいところは、卵のひとつぶひとつぶに、生命がめばえてい よ、つすか、手にとるよ、フにわかることです。 さんらん 産卵して五日め。 とうめいなうすい膜でおおわれた卵のなかに、 小さな黒いかたまりが見え はつがんらん はじめました。発眼卵です。あたらしい生命の誕生が、はっきりみえてき は、つ、つ たまご たまヾこ のちたんじよう あみ

9. よみがえれムサシトミヨ

ました。 ちぎよたま」まく 十日目になってふ化がはじまりました。稚魚か卵の膜をやって、体をふ るわせながらでてきます。 ちぎよ 十三日目にかぞえてみると、百二十四ひきの稚魚がいます。 しかし、一、のなかから親魚まで育ったのは、四十三びきでした。 ちぎよ 稚魚から、親魚に成長するころの時期に、多くが死んでいきます。 それに、カビがはえてしまって、ふ化しない卵もすくなくありません。 たまヾこ しよ、つとく 矢辺さんは、卵をカビからまもるために、薬で消毒をすることにしまし た。水そうに卵をおき、そのなかにメチレンプルーという薬をうすめていれ はつがんらん ます。この作業を、発眼卵になるまで、一日おきにくりかえしていきます。 す一、しつつ薬の使い方をくふうし、人工ふ化をくりかえすうちに、卵のふ わりあい 化する割合も高くなっていきました。 たまヾこ せいちょ、つ たまヾこ

10. よみがえれムサシトミヨ

東中学校の飼育に、大きな期待をかけていた人たちは、飼育がうまくい かないのではないかと心配をしていました。 しい / 、、がかり・ 社〈 ~ 教育課の俊明さんや、水族館の飼育係の人たちは、何度も何度も 学校に足をはこび、科学部の先生や生徒たちをはげましつづけました。 えっかちょうさ そして、飼育をはじめて五か月後の十月、第一回目の越夏調査がおこなわ れました。 しやかいきよ、ついくカ 科学部員たちゃ、さいたま水族館、社会教育課の人たちは、池の水をく みだしてムサシトミョの数をかぞえました。 六十七ひきです。春より三倍にふえています。 東中学校での成功は、科学部員や、い「しょにとりくんできた人たちだ かんしん けでなく、ムサシトミョの保護に関心をもつ、多くの人たちの大きなはげみ になりました。 せいと